学費とバイト代180万円を、X(Twitter)DMの『神トレーダー』に運用させて全損した20代大学生
福岡市の大学2年生Yさん(仮名・男性)が、X(Twitter)のDMで知り合った『FX歴10年・年利200%』を自称する人物に、自分のFX口座のIDとパスワードを預けて運用代行を依頼。180万円が約2か月で全損。米利上げ局面のドル円ロング戦略がハイレバで崩壊した。
Yさん(仮名・20歳男性・福岡市の私立大学2年生)から届いた話。X(Twitter)のDMで知り合った『FX歴10年』を自称する人物に、自分のFX口座のIDとパスワードを預けて運用を委託し、約2か月で180万円を全損した経緯。
取材は2024年初に始まり、Yさんが両親と相談しながら掲載に同意してくれた。同年代の大学生に向けた警告として、ぼかしを最小限に残してある。
大学生のYさん
Yさんは福岡県内の私立大学経済学部の2年生。実家から通学。週4日のバイト(飲食店ホール)で月7-8万円の収入があり、奨学金は受けていなかった。
高校時代から株式投資に興味があり、両親に頼んで成人前から少額のつみたてNISAを始めていた。X(Twitter)でも投資関連のアカウントを20件ほどフォローしていた。
『神トレーダー』のDM
2023年の春、Yさんのアカウント宛に、フォロワー数約3万人の「FXフルレバ侍」というアカウントからDMが届いた。内容は「あなたのツイート見ました。投資のセンスがありそう。私の運用ノウハウを少額で試してみませんか」という趣旨。
そのアカウントのプロフィールには「FX歴10年・累計利益2億円・年利平均200%」と書かれていた。投稿は毎日3-4本、為替分析と取引画面のスクリーンショット。フォロワーとのリプライも頻繁にしていて、人柄の良さそうな印象だった。
YさんはまずDMで質問を返した。「運用には何が必要ですか?」「月いくらから始められますか?」。回答は丁寧で、専門用語を交えながら、初心者にもわかりやすく説明してくれた。
『口座を預けてください』
3週間ほどDMでやり取りした後、相手から具体的な提案があった。「あなたが国内のFX口座を開設してください。そこに資金を入金してください。私がIDとパスワードを預かって、運用します。利益は5:5で分けます」。
Yさんは半月ほど迷った。父親に相談しようかとも考えたが、「年利200%」「月収7万円のバイトより明らかに効率がいい」という経済合理性で、最終的に依頼することに決めた。
5月、Yさんは某国内FX業者の口座を開設。バイト代から貯めていた60万円と、奨学金口座から借り入れた120万円(合計180万円)を入金。IDとパスワードをDMで相手に送った。
最初の1か月
5月〜6月、Yさんの口座では実際に取引が行われていた。米ドル/円の買いポジション、レバレッジ20倍。日々の含み益と含み損が大きく動いていた。
5月末時点で、口座残高は220万円(評価額)。1か月で40万円の利益。Yさんは相手に「この調子なら年利200%は本当ですね」とDMで伝えた。相手は「これからもっと加速します」と返信。
6月中、ドル円は140円台で乱高下していた。米国の利上げサイクル後半で、市場は神経質。Yさんの口座も日々大きく変動していたが、相手から「相場には波がある。長期で見れば必ずプラス」というメッセージが定期的に来ていたので、Yさんは画面を見ないようにしていた。
7月の急落
2023年7月、ドル円は137円台まで下落した。Yさんの口座は、レバレッジが高かったため、含み損が急速に拡大した。
7月14日、Yさんが大学のキャンパスで講義を受けている最中に、口座のアプリから通知が届いた。「ロスカット執行:残高8,520円」。
180万円が、画面上で8,520円になっていた。
Yさんはすぐに『FXフルレバ侍』にDMを送った。返信はなかった。30分後、相手のアカウントは削除されていた。Xの検索でも、相手の名前では何も出てこなくなった。
両親への告白
その日の夕方、Yさんは家に帰って、両親にすべてを話した。父親(50代会社員)は最初、状況を理解するのに時間がかかった。
「FX口座を他人に預けて運用させる、ということ自体が、父には理解できないことだった。それが詐欺の入り口だと、後から父も整理した」
母親(50代パート勤務)は、Yさんが奨学金口座から120万円を借りていたことに最も衝撃を受けた。奨学金は将来のYさんの返済義務になる。
その後
Yさんは7月中にFX口座を解約。両親と相談して、警察と消費者センターに相談に行った。警察からは「相手の特定と立件は実質困難」と言われた。消費者センターからは「投資詐欺・無登録金融商品取引業の可能性」として弁護士相談を勧められた。
弁護士相談(30分5,000円)では、「相手の特定なしには法的手段は取れない」「特定するには発信者情報開示請求が必要・費用は数十万〜100万円・成功率も高くない」と説明された。Yさんと両親は法的手段を断念した。
180万円は両親が肩代わりすることになった。奨学金120万円分はYさんが大学卒業後に返済する条件。バイト代60万円分はYさんが半年かけて両親に返済中。
振り返り:3つの教訓
Yさんから取材の最後にいただいた、同年代の大学生に向けた3つの教訓。
1. 自分のFX口座のIDとパスワードを他人に渡さない
FXの運用代行は、金融商品取引業の登録なしには違法。「個人的に運用してあげる」と提案してくる時点で、ほぼ詐欺と考えていい。
2. 『年利200%』は数学的に持続不可能
年利200%が本当なら、1万円が10年で6,000万円超え。その人物は今頃ヘッジファンドのオーナーになっている。SNSで他人の口座を運用する立場にはいない。
3. 奨学金は投資資金にしない
奨学金は将来の自分への借金。それを投資に使うのは、自分の将来の収入を担保にしたレバレッジ取引と同じ。失えば将来の自分が払う。
Yさんの体験から、整理できること
編集者注:以下はYさん個人の体験から整理した視点で、当サイトからの投資助言・売買推奨ではない。投資判断は読者本人の責任で。
心理と反省ポイント
- ロスカットは保険であって敵じゃない。動かす方向を間違えると一晩で口座が空になる。
- 指標発表の前後は流動性が抜けて、設定したロスカット幅を素通りすることがある。
- 深夜の30分だけのトレードは、判断疲れが乗ったまま画面に向かう時間でもある。
もう一度選び直すなら
失敗した道具・口座・サービスを今からどう選び直すか。
比較記事で軸を整理してから動くと、同じ罠を踏みにくい。
専門家に相談する
ひとりで抱えると判断が鈍る。
被害の状況や生活設計の悩みは、その道のプロに早めに話す方が結果的に軽くなる。