ファンド・投信

銀行窓口で勧められた毎月分配型投信、5年で気付いた『配当の原資は元本』の話

千葉県の60代男性Hさんが、定年退職時に銀行員に勧められて契約した毎月分配型投資信託。安定した分配金に満足していた5年間の裏で、分配金の8割が元本払戻金(特別分配金)だったと気付いた経緯。退職金1500万円のうち実質420万円が目減りした記録。

属性64歳男性・千葉県 損失額¥4,200,000-
約 5 分で読めます(2,112字)
目次
  1. 退職金振込と銀行窓口の予約
  2. 勧められた商品の概要
  3. 1年目から3年目、分配金は約束通り入った
  4. 4年目、息子の指摘
  5. 長男の説明で分かった構造
  6. 3年間の損益を計算した
  7. 解約までの判断
  8. 長男のアドバイスで次の一手
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Hさん(仮名・64歳男性・千葉県在住・元地方公務員)から届いた話。定年退職時に銀行員に勧められて契約した毎月分配型投資信託の5年間で、分配金の大半が元本払戻金だったことに気付いた経緯。退職金1,500万円のうち実質420万円が目減りした記録。

退職金振込と銀行窓口の予約

2022年3月、Hさんは40年勤めた市役所を定年退職。退職金として約2,300万円が指定の銀行口座に振り込まれた。
振込から1週間後、銀行から手紙が届いた。「退職金専用の資産運用ご提案」というタイトルで、支店の応接室で資産運用相談員と面談できるという案内だった。
「妻と相談して、せっかくの機会だから話だけ聞いてみよう、ということになりました。銀行員さんが提案してくれるなら、変なものは勧めないだろう、と」

勧められた商品の概要

面談で勧められたのは、毎月分配型のグローバル債券型投資信託。提示された数字はこうだった。

  • 投資金額:500万円〜1,500万円推奨
  • 予想分配金:毎月1万円前後/100万円あたり
  • 信託報酬:年1.65%
  • 購入時手数料:2.2%(窓口購入のため)
  • 過去5年の分配金実績:月1.1〜1.3万円/100万円あたり安定
  • 解約:いつでも可能

Hさんは「年金が出るまでの間、月10万円から15万円の追加収入があると生活が楽になる」と感じた。妻も「毎月入ってくるなら家計の足しになる」と賛成した。
2週間検討して、退職金のうち1,500万円を投入。残り800万円は普通預金に残した。

1年目から3年目、分配金は約束通り入った

契約後、毎月25日に約16万5,000円の分配金が指定口座に振り込まれた。年間で約198万円。
1年目、2年目、3年目と、分配金は安定して入り続けた。Hさんは「これで年金が出るまで生活できる」と安心していた。
「ただ、ファンドの評価額は毎月少しずつ下がっていました。気付いてはいたんですけど、『分配金を払ったぶん減るのは仕組み上当然』と銀行員さんに言われていたので、深く考えていませんでした」

4年目、息子の指摘

2026年の正月、独立した長男(38歳)が帰省した際、Hさんの投信運用報告書を見せた。長男は会社員でNISAの新規つみたて投資をしていた。
長男が指摘したのは、運用報告書の「分配金の内訳」の欄。
「これ、『普通分配金』と『元本払戻金(特別分配金)』に分かれてるんだけど、お父さん、毎月の16万5,000円のうち、ほぼ全部が『元本払戻金』になってるよ」
Hさんは初めて、その項目を見た。それまでの3年間、運用報告書を受け取っていたが、合計額しか見ていなかった、と。

長男の説明で分かった構造

長男の説明で、毎月分配型投信の仕組みが分かった。

  • 分配金は「ファンドの運用益」から払われる場合と、「投資元本」から払われる場合がある
  • 運用益から払われる分は「普通分配金」(課税対象)
  • 投資元本から払われる分は「元本払戻金(特別分配金)」(非課税だが、要するに自分の出したお金が戻ってきているだけ)
  • 運用益が分配金額に届かない月は、その差額がすべて元本払戻金になる

Hさんのファンドの場合、月1.65万円の分配金のうち、平均して1.3万円〜1.4万円が元本払戻金だった。
「分配金が入っている」と思っていた3年間、実際にはほとんどが自分の出した1,500万円が少しずつ戻ってきていた、ということだった。

3年間の損益を計算した

長男と一緒に、3年間の収支を計算した。

  • 投資元本:1,500万円
  • 3年間の累計分配金:約594万円(うち約475万円が元本払戻金)
  • 解約時評価額(2026年3月時点):約856万円
  • 受取分配金 + 評価額 = 1,450万円
  • 投資元本との差:約50万円のマイナス

3年間の実質損失は約50万円。ただし、購入時手数料33万円と3年間の信託報酬約74万円も含めると、コスト総額は約107万円だった。
「分配金が毎月入ってきているから運用は順調」という認識と、実際の収支がここで初めてつながった。

解約までの判断

2026年4月、Hさんは銀行窓口で解約の相談をした。窓口の担当者は当時の担当ではなく、別の人だった。
「『お解約のご希望ですか。理由をお聞かせいただけますか』と聞かれて、『分配金の内訳に気付いて、5年で元本がこれだけ減ることが分かったので』と答えました。担当の方は『そうですね、毎月分配型はそういう商品です』とだけお答えになりました」

解約完了。手元に約856万円が戻った。投入した1,500万円との差し引き、3年間の元本払戻金を考慮した実質損益は、トータルで約420万円のマイナス。

長男のアドバイスで次の一手

解約後、Hさんは長男の助言で、戻った856万円のうち500万円を新NISAのつみたて枠でインデックス投資信託に再配分。残り356万円は生活防衛資金として銀行預金に。
「『お父さん、年金が出る65歳まであと1年半。それまでは投資より生活防衛で十分』と息子に言われました。今は、新NISAのつみたて投信が月1万円ずつ動いてるのを見るだけです」

毎月の分配金が入っていた間、満足していた5年間がそのまま元本の削り取りだったと気付くまでに、息子の指摘が必要だった。

LESSONS & CONSIDERATIONS

Hさんの体験から、整理できること

編集者注:以下はHさん個人の体験から整理した視点で、当サイトからの投資助言・売買推奨ではない。投資判断は読者本人の責任で。

A
REFLECTION

心理と反省ポイント

  • 毎月分配型投信の分配金は『運用益』だけでなく『元本払戻金』を含むことが多い。運用報告書の内訳欄を毎月確認しないと、自分のお金が戻っているだけと気付けない。
  • 退職金の窓口提案は銀行側の手数料が高い商品が選ばれやすい。購入時手数料2.2%と年1.65%の信託報酬は、長期では決定的に効く。
  • 65歳前後の運用は『増やす』より『減らさない』が原則。月10万円の分配金は魅力的に見えるが、その原資が自分のお金であれば、ただ取り崩しているだけになる。
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