重大事件

ケフィア事業振興会事件とは ─ 干し柿の「オーナー」で約3万人・1,002億円を集めた預託商法(2018年破綻)

2018年に破綻したケフィア事業振興会。干し柿や明太子などの食品オーナー制度をうたい、買戻し特約付きの契約で約3万人から負債総額1,002億円規模の資金を集めた。「投資に見えない」入口で被害を広げた預託商法の構造を整理する。

損失額
約 6 分で読めます(2,621字)
目次
  1. 干し柿や明太子の「オーナー」になる
  2. 「投資に見えない」という入口
  3. 買戻しという、果たされない約束
  4. 2017年秋、買戻しが遅れ始める
  5. 2018年9月、29社が連鎖破産
  6. 出資法違反、そして詐欺で逮捕
  7. ケフィアが残した教訓
  8. 事件記録について
  9. 管理人の感想
共有: X LINE

「投資をしたつもりはなかった」。この事件の被害者から、よく聞かれる言葉である。ケフィア事業振興会事件。干し柿や明太子の「オーナー」になるという、通販に近い感覚の入口から、約3万人・負債総額1,002億円規模の被害が生まれた。

※本記事は当時の公的資料・報道に基づく事件記録です。体験者への取材記事ではありません。

干し柿や明太子の「オーナー」になる

ケフィア事業振興会は、もともと健康食品やケフィア(発酵食品)の通信販売を手がける会社だった。その会社が広げたのが「オーナー制度」である。

仕組みはこうだ。客は1口5万円程度で、干し柿・梅・明太子といった食品の「オーナー」になる。ケフィア側がその食品を加工・販売し、一定期間後に出資金へ利益を上乗せして買い戻す。形のうえでは、買戻し特約の付いた売買契約だった。

パンフレットに並ぶのは、株やFXのチャートではなく、干し柿や梅干しの写真である。投資の難しい話は出てこない。「食品のオーナーになって、応援して、リターンをもらう」という、やわらかい言葉で語られていた。

「投資に見えない」という入口

この事件が広範囲に被害を広げた理由は、まさにこの「投資に見えない」点にあった。

株や暗号資産には身構える人でも、食品のオーナー制度には警戒心が働きにくい。通販のカタログの延長線上にあるような、生活に近い商品。勧めてくるのも、怪しい投資家ではなく、健康食品を扱う身近な会社だった。

結果として、投資の経験がない層、とりわけ主婦や高齢者が「ちょっとした副収入」「応援のつもり」で口数を増やしていった。気づいたときには、生活資金の多くがオーナー契約に替わっていた、というケースが報告されている。

買戻しという、果たされない約束

オーナー制度の核心は「買戻し」にあった。一定期間後に、出資金に利益を乗せて買い戻す。この約束があるからこそ、客は安心してお金を出した。

だが、その原資はどこから来るのか。新しいオーナーが払った出資金を、古いオーナーへの買戻しに充てる。豊田商事やMRIと同じ、自転車操業の構造である。食品の販売だけで、約束した買戻しと利益をすべて賄えていたとは考えにくい。

商品が金から食品に変わっても、骨格は同じだった。実体のあるビジネスに見せて、後から入る人のお金で、前の人に配る。

2017年秋、買戻しが遅れ始める

破綻には、はっきりとした予兆があった。

2017年11月頃から、ケフィアによる買戻し代金の支払いが遅れ始める。最初は「事務手続きの都合」といった説明だったとされるが、遅延は解消されなかった。2018年6月以降、全国の消費生活センターや弁護士に、極めて多数の相談が寄せられる事態に発展する。

配当や買戻しの「遅延」は、この種の商法における最大の危険信号である。自転車操業は、新規の資金が細った瞬間に回らなくなる。支払いの遅れは、その内部で何かが起きているサインだった。

2018年9月、29社が連鎖破産

2018年9月3日以降、ケフィア事業振興会を含むグループ29社と、代表者ら3名が、順次破産した。

2019年5月の債権者集会で示された負債総額は、約1,002億円。債権者は約3万人にのぼった。集めた資金の大半は、すでに買戻しの支払いと運営で消えていた。

出資法違反、そして詐欺で逮捕

2020年2月、警視庁は元代表の鏑木秀彌ら9人を、出資法違反(預り金の禁止)の疑いで逮捕する。翌3月には、当時の幹部7人を詐欺の疑いで再逮捕した。

被害者への配当は、約3万人に対して約30億円分配の見通しと報じられた。1,002億円規模の負債に対して、戻る見込みはごくわずかである。「副収入のつもり」で預けたお金は、ほとんど返ってこなかった。

発生・破綻2017年秋に買戻し遅延、2018年9月3日以降にグループ29社+代表者ら3名が連鎖破産
手口干し柿・明太子等の食品オーナー制度(1口5万円・買戻し特約付き売買)。実態は新規出資金で買戻しを賄う預託商法
被害規模債権者 約3万人・負債総額 約1,002億円
結末2020年に元代表ら出資法違反・詐欺で逮捕。被害者配当は約30億円分配の見通し(負債の数%)
系譜豊田商事・ジャパンライフ・安愚楽牧場と同じ「現物オーナー・預託商法」型

ケフィアが残した教訓

ケフィア事件を一行にすると、「投資の顔をしない勧誘で、買戻しの約束だけを売った」になる。ここから引き出せる教訓は3つある。

  1. 「投資」に見えない勧誘ほど、警戒が要る。オーナー制度・応援・通販。やわらかい言葉でラッピングされた高利回りは、身構える隙を与えないぶん危険度が高い。
  2. 買戻し・配当の「遅延」は、最大の危険信号。支払いが遅れ始めたら、それは内部で資金が回らなくなっているサインである。「手続きの都合」という説明を待っている間に、破綻は進む。
  3. 預託・オーナー商法は、商品を変えて何度でも繰り返す。金(豊田商事)、和牛(安愚楽牧場)、磁気治療器(ジャパンライフ)、食品(ケフィア)。次は別の商品で、また現れる。

骨格は豊田商事事件の現物まがい商法と同じで、磁気治療器を使ったジャパンライフ事件とも地続きである。商品名と時代が違うだけで、「現物を見せ、買戻しと配当を約束し、後から入る人の金で回す」構造は変わらない。

怪しさの見分け方は、投資詐欺の見抜き方に整理してある。

LESSONS & CONSIDERATIONS

—さんの体験から、整理できること

編集者注:以下は—さん個人の体験から整理した視点で、当サイトからの投資助言・売買推奨ではない。投資判断は読者本人の責任で。

A
REFLECTION

心理と反省ポイント

  • 失敗にはパターンがある。自分だけが特殊なケースだ、と思った時こそ典型例の可能性が高い。
  • 判断が鈍る時間帯・状況・心理状態を、自分で把握しておく。
  • ひとりで抱え込まない。早めに専門家に話すほうが、結果的に被害は小さい。
B
PRACTICAL CHOICE

もう一度選び直すなら

失敗した道具・口座・サービスを今からどう選び直すか。
比較記事で軸を整理してから動くと、同じ罠を踏みにくい。

C
PROFESSIONAL HELP

専門家に相談する

ひとりで抱えると判断が鈍る。
被害の状況や生活設計の悩みは、その道のプロに早めに話す方が結果的に軽くなる。

FOR YOUR NEXT STEP

次にどこへ進むか